スペシャルインタビュー
「教えて、子育てのコツ」

INTERVIEW

04

どうする?
子供の病気・ケガ

乳幼児の病気やケガについて、
イチからお教えします。

乳幼児期の子育てにおいて、悩みの多い「病気・ケガ」。気をつけて生活していても、すべてを防ぐのは難しいものです。
また、不測の事態は突然やってくるもの。そんなとき、どう対処したらよいのか、心構えを持っておくのは大切でしょう。
そこで今回は総合母子保健センター愛育クリニック院長の渋谷紀子さんを迎え、
子供の病気・ケガについてイチから教えていただきました。

THEME 01

乳児期(0〜1歳)の病気・ケガ

熱に関する悩みが多い傾向。
子供の平熱を把握しよう。

親御さんからはどんな悩みや相談があるのでしょうか。

乳児期のお子さんを持つ親御さんからは「熱」に関する相談が多く寄せられます。特に、体温が37.5℃を超えるような状況になると「熱が出ているのでどうしたらよいか」といった心配される声をよく聞きます。

乳児の平熱は一般的に36.5〜37.5℃。確かにこの温度を超えるのは熱っぽいかどうかの目安にはなりますが、大切なのは我が子の通常時の体温を把握しておくこと。平熱が高めのお子さんであれば多少の上振れはあり得ます。子供の安静時や就寝時に体温を測っておき、普段の状態を知っておくことが大切でしょう。

初めて発熱するとあわててしまいがちですが、体温計の数字に惑わされず、機嫌はどうか、食欲はあるかなど、まずは冷静に子供の様子を見てあげてください。

乳児期にかかりやすい病気はどのようなものがありますか。

いくつかあるなかで特に重要なのが「RSウイルス感染症」です。この病気は、生後1歳までに半数以上のお子さんがかかると言われています。症状としては、軽いかぜの症状で済むことも少なくありませんが、初めて感染した乳児の3割程度は細気管支炎や肺炎など重い症状を引き起こします。普段のように母乳やミルクが飲めない、咳がひどくて眠れない、ゼイゼイしている、呼吸をする際に胸の辺りがペコペコへこむ(陥没呼吸)ときは、早めに医療機関を受診すると良いでしょう。

乳児期の子供は言葉などで自分の状態を表現できないぶん、その変化に気づくには子供の様子がいつもと違うかも、という親御さんの「感覚」が非常に重要になってきます。普段より機嫌が悪い、顔色が良くない、食欲がない、便の色が違うなど、何か違和感を感じたら、かかりつけの医師に相談してください。

また、0歳児は他にもかかりやすい病気がたくさんあり、その中には感染すると後遺症を残したり、命に関わるような危険性の高いものも存在します。それらの病気から赤ちゃんを守るために各種ワクチンの接種が行われているので、適切な時期に決められた回数を是非受けて下さい。

【参考】
東京都こども医療ガイド 予防接種について
https://www.guide.metro.tokyo.lg.jp/vaccination/about/index.html

国立感染症研究 予防接種スケジュール
https://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine-j/2525-v-schedule.html

ケガについては、転倒して頭をぶつけた、擦り傷ができたなどが多いですが、0才でもっとも危険な事故は窒息ですので、のどを詰まらせるようなものが周りに無いか、いつもチェックするようにしましょう。また、大人用ベッドではなく、できるだけベビーベッドに寝かせ、敷布団やマットレス等の寝具は硬めのものを使用し、1歳になるまでは、寝かせる時は、あお向けに寝かせましょう。

THEME 02

幼児前期(1〜2歳)の病気・ケガ

集団生活により体調を崩しやすくなる年頃。
覚えておきたい「熱性けいれん」。

幼児前期ではどんな悩みが増えるのでしょうか。

1歳頃から保育園など集団生活に入るお子さんも最近は多いと思います。入園するまでは家族以外の人と触れ合う機会も少なかったことから、最初の1〜2ヶ月は「風邪にかかる→治る」を繰り返すケースがほとんどです。

親御さん目線では不安になるかと思いますが、身体が免疫力を高める時期でもあるため必要以上に心配する必要はありません。2歳を過ぎる頃になると風邪にかかる頻度も徐々に落ち着いてくるでしょう。

また、RSウイルス以外にもインフルエンザや手足口病、ヘルパンギーナなどの感染症にかかりやすくなるのが幼児前期です。

発熱した際に気をつけるポイントはありますか。

発熱を伴う病気にかかった際に覚えておいてほしいのは、「熱性けいれん」を起こす可能性があることです。症状としては、目の焦点が合わない、身体が固く突っ張り歯を食いしばる、ガクガクと震える、口から泡を吹く、などが2〜3分、長くて5分ほど続きます。

初めて起こすと非常に驚くかと思いますが、これらの症状が見られた際には、子供の衣服をゆるめて横向きに寝かせ、けいれんの時間を計るなど、冷静に様子を見るのが大切です。慌てて口の中に何かを入れたり、身体を揺すったりなどはしないように注意してください。

熱性けいれんは、乳幼児の3〜8%が経験するといわれます。発生の詳しい原因はわかっていませんが、乳幼児期は脳の発達が未熟なため発熱による刺激でけいれんを引き起こすのではないかと考えられています。熱性けいれんの多くは合併症を起こすことも後遺症が残ることもありません。

ただし、けいれんが5分間以上続く場合や、けいれんの後でぐったりしたり、意識がはっきりしないときは、すぐに救急車で病院へ行ってください。

ケガについては、何か注視すべきことはありますか。

走ったり、登ったり、飛び跳ねたり……。幼児前期は運動が活発になる時期であり、擦り傷や切り傷が増えるのもこの頃です。

過去の患者さんのなかでは、コンセントにつながったケーブルを口に咥えて電撃傷になってしまった子、お兄ちゃんからもらったアメを舐めて窒息しかかった子など、さまざまな理由で病院に駆けつけるケースがありました。

兄弟や友達と一緒に遊ぶ場面も増える時期になりますので、重大な事故を防ぐには親御さんが先回りして安全確認をしてあげましょう。また、子供だけで遊ばせるのは危なそうだなと感じる場面では、できるだけ子供から目を離さず、子供が転びそうになったら助けてあげられるよう、手の届く範囲にいるようにしましょう。ただ、ずっと目を離さないことは限界があるため、「危ないところを変える」という環境づくりも大切です。例えば、足がかりになるようなものがあると、思わぬところに登ることもあるため、そうした足がかりになるものを片付けるなどして、転落や溺水などの危険にも注意しましょう。

【参考】
東京消防庁「知ろう!!日常に潜む危険!!」
(子どもの発達段階に応じた日常生活での事故について、事故事例や予防策、応急手当等を紹介したアニメーション動画)
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/video/nichijou.html

東京都生活文化スポーツ局「STOP! 子供の転落事故」
(子供がベランダの手すりの高さまで素早くよじのぼっていく実験映像や、転落事故を防ぐポイントを紹介する動画)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/attention/2022/fall_movie.html

東京都子供政策連携室「東京都こどもセーフティPJ 危ないところを変えよう編」
(子供を事故から守る環境づくりに取り組むことの大切さを呼び掛ける動画)
https://kodomosafetypj.metro.tokyo.lg.jp/#section_movie

THEME 03

幼児後期(3〜6歳)の病気・ケガ

溶連菌などの感染症に注意。
異変を感じたら医師に相談。

幼児後期の悩みにはどんな特徴があるのでしょうか。

3歳以上になると風邪で熱を出す頻度はだんだん少なくなります。先に挙げた「RSウイルス感染症」の重症化もほぼ心配いりません。

幼児後期の病気の特徴としては、それまではハッキリと判断がつかなかった症状に病名が付けられるようになります。例えば「気管支ぜんそく」や「花粉症」などが該当します。

風邪かな?と思うような症状でも、症状が長く続いたり、頻度が多かったりした際は一度、病院で診察を受けてみると良いでしょう。

かかりやすい病気などはあるのでしょうか。

インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などには年齢にかかわらずかかりやすいですが、3歳頃から増えてくるのが「溶連菌感染症」です。この病気は、感染者からのくしゃみや咳によって感染しますが、感染力が強い細菌のため、毎年、保育園や幼稚園で感染する子供が出ています。

症状としては、発熱と喉の痛みから始まり、全身に細かな発疹が広がったり、嘔吐や腹痛を伴うこともあります。対処法としては、抗菌薬を服用することにより症状がおさまりますので、病院で薬を処方してもらい、最後まで薬を飲み切り、自宅では水分補給を欠かさず、安静に過ごすことが大切です。登園停止の基準が定められている病気です。

また、この年齢になったら、うがい・手洗いは家庭でできる一番の感染症予防です。お出かけから帰った際はこまめな実施を促してあげてください。そして、丈夫な身体をつくるには栄養のある食事と適切な睡眠が大切です。好き嫌いや夜更かしなど、生活のリズムになるべく偏りが出ないようコントロールすることを心がけてみてください。

ケガについてはいかがでしょうか。

活動範囲が広がり、打撲、捻挫、骨折など、ケガのレベルも徐々に大きなものになってきます。また、ベランダからの転落事故や自動車との接触事故など、命に関わるようなケガをされるお子さんも増えてきます。公園など通い慣れた場所でも親御さんは注意して見守ってあげてください。また、水難事故などレジャー先での不注意によって起こるケガ・事故にも気をつけてほしいと思います。

THEME 04

病院の受診

まずは家庭で様子を見る。
必要に応じて病院の利用を。

病院を受診する適切なタイミングはあるのでしょうか。

乳児期のお子さんの場合は免疫力も弱いですし、保護者の方も慣れていないでしょうから早めに受診したほうが良いかも知れません。ですが、子供が成長してだんだんと子育てにも慣れてきたらご家庭で様子を見てみて、熱が続いたときなど、必要があれば病院に行く形でも良いかと思います。

少し熱っぽくても日常生活が十分に送れている、例えばご飯をしっかり食べる、よく眠る、顔色もよく元気に遊んでいるなど大きな差し障りがなければ、急いで病院にかかる必要はないかと思います。

お子さん自身の免疫力も働いていますので、解熱薬をはじめとした薬の使用は必要最小限にして、時と場合に応じて病院を利用してもらえるとよさそうです。

また、正しい情報収集の場として病院は非常に役立ちます。ふだんから疑問に思っていることや、気を付けること、今流行っている病気などを、健診などの機会に医師から教わることでご家庭での予防対策にも役立つでしょう。妊娠中に、健康についての相談をするかかりつけの小児科医をきめておくと安心です。また、東京都では、HP「東京都こども医療ガイド」で子供の健康・救急に関する情報や緊急時の対応を普段から見ることができます。また、夜間・休日の子供の健康・救急に関する相談の窓口として「子供の健康相談室(小児救急相談)」を設けています。適宜、活用してみてください。

最後に、このページを見ている、子育て中のママ・パパに応援メッセージがあればお願いします。

を出したりケガをしたりと初めての出来事は親御さんも心配かと思います。いろいろと不安になることが多いと思いますが、どんな子供でも病気はするものです。

さまざまな病気を経験しながら免疫力がついて体が強くなっていきますので、病気になってもあわてなくて大丈夫。多くはお子さん自身の力で乗り越えることができます。でも、お子さんを心配して寄り添う親御さんの気持ちもきっと力になるはずです。子供が小さいうちや不安なときは、いつでも小児科を頼って相談してください。私たちも全力でサポートしていきます。

※子供のケガや病気に関しては、以下のサイトもご参照ください。

東京都福祉局「乳幼児の事故防止教育ハンドブック」
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/jiko_kyouiku.html

東京都福祉局「乳幼児期の事故防止学習ソフト」
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/jikoboushi.html

東京都福祉局「TOKYO子育て情報サービス」
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/info_service/info-service.html

東京都子供政策連携室「東京都こどもセーフティプロジェクト」
https://kodomosafetypj.metro.tokyo.lg.jp/

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渋谷 紀子(しぶや のりこ)

総合母子保健センター愛育クリニック院長兼愛育産後ケア子育てステーション所長、日本小児科学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医。東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、愛育病院、NTT東日本関東病院などを経て、愛育クリニック小児科へ。専門は小児アレルギー。『はじめてママ&パパの0~6才 病気とホームケア』の監修にも携わる。