スペシャルインタビュー
「教えて、子育てのコツ」

INTERVIEW

02

どうする?
慣れない離乳食づくり。

知識ゼロからでも大丈夫。
離乳食の悩みにお答えします。

生後5〜6ヶ月ごろを目処にスタートする離乳食。
赤ちゃんにはどんなものを食べさせて良いのか、食材はどう調理すればいいのか、悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、管理栄養士として乳幼児の食事づくりや食育活動に携わってこられた中村美穂さんに、
離乳食づくりにおいてよくあるお悩みについてお答えいただきました。

THEME 01

離乳食のスタート

特別な器具は必要なし。
衛生面に気をつけて、
食べやすい工夫を。

離乳食づくりをはじめる際、
どんな悩みや相談があるのでしょうか。

まずは調理器具についてのお悩みが寄せられます。料理をされた経験が少ないママ・パパもいらっしゃるので、そもそも離乳食をつくるには何が必要なのか、悩まれる方も多いようです。

そうした悩みに対する答えは「特別な器具は必要ない」ということ。離乳食づくりのためだけに新たに調理器具を買い揃える必要はありませんし、もし不足があっても100円均一やスーパーなどで買えるもので十分です。また、炊飯器などの家電を使った調理方法も増えてきているので、上手に活用するのが離乳食づくりのカギになります。

調理する際に気をつけるべきポイントを教えてください。

一番は食中毒などを防ぐための衛生管理です。哺乳瓶などと同様に赤ちゃんが使用する食器類は清潔なものを使用します。また、食材は新鮮なものを選び、調理する際は食材に菌が付着しないようにキッチンを清潔に保つよう心がけてください。

次に、食材を調理する際のポイントとしては、柔らかさと大きさの2点です。食材は、まだ歯が生えていない赤ちゃんでも噛めるぐらいに芯までしっかりと茹で、柔らかくするのが大切です。また、口にする食材のサイズは、月齢にあわせて飲み込みやすい大きさに整えてあげてください。

調理時のちょっとしたコツとして、食材を小さく切ってから茹でると、火は通りは速いのですが角や断面がかたい仕上がりになりがちなので、ある程度大きめにカットしたものをたっぷりのお湯で茹でたのちに、細かく刻んであげること。

THEME 02

食べていいもの、ダメなもの

月齢の基準を
意識しすぎなくてOK。
アレルギー反応がある食材は
1日1品ずつ試してみる。

月齢によって食べられる食材が変わると思います。何を基準にするのがいいでしょうか。

離乳食のことを調べていくと、月齢に応じて食べてよい食材・ダメな食材の一覧表を目にする機会があるかと思います。これは赤ちゃんの咀嚼(そしゃく)や消化、味覚の発達などにそって進めるためのガイドなのですが、実はこの食べて良し悪しの線引きは非常に難しく、すべての食材について国が明確な基準を定めているわけでもないため、本や雑誌によって判断の基準が変わる部分でもあります。

よくある相談として「情報が異なる際にどれを信じたらいいのかわからない」といった声が寄せられますが、おおまかな時期さえ外していなければ、多少の前後に問題はありません。また、「月齢ごとの目安表に載っている食材すべてを、食べさせる必要があるのか?」といった質問も多いのですが、その必要もありません。たしかに偏りすぎずに幅広く口にすることも大事ですが、日本は世界の中でも有数の食が豊かな国ですから、多種多様な食材があります。それらのすべてを食べさせるのは難しいでしょう。赤ちゃんの発育やご家庭の状況にあわせて、適宜判断するのが大切です。

アレルギーのチェックについて、どこまで調べるといいのでしょうか。

アレルギーについても心配される方は多くいます。特にひと昔前とは扱い方の変わった食材は、諸説あって判断が難しいですよね。例えば「卵」などは、昔はある程度の発育後に与えるケースが多かったようですが、開始時期を遅らせても予防効果はないと言われるようになりました。そうした時代の変化にどこまで合わせるべきか、頭を悩ませる問題のようです。

新しい商材を試す際のポイントは、開始時期の目安を参考に必ず熱を加えて、1日に1品ずつ試していくこと。なぜ1日1品かと言うと、もしアレルギー反応が出た際に、どの食材に反応したのかわかるようにするためです。肌トラブルがあると、食材が肌についてアレルギー反応を起こす場合がありますので、その点にも注意しましょう。

アレルギー反応が強く出る恐れがある食材については、病院が診療受付をしている時間帯にテストすることをオススメします。食材を口にしたあと、もし赤ちゃんに何か気になる様子があった場合は、すぐに病院や専門家に問い合わせてください。大切なのは自己判断をしないこと。些細なことでも気になったら専門家に相談し、判断を仰いでください。

THEME 03

毎日の離乳食づくり

「無理せず、効率よく」
がポイントに。
市販品も積極的に活用しよう。

離乳食づくりにも慣れてくると、献立のバリエーションに悩む…。毎日の食事メニューは変えた方がいいですか。

これも非常に悩まれる方がたくさんいます。毎日、毎食のすべてを異なるメニューにするのは現実的に難しいと思うので、「無理せず、効率よく」でできる方法を考えてみると良いかもしれません。

例えば、ある程度の月齢になれば「手づかみ食べ」ができるようになるので、柔らかく茹でたにんじんや棒状に切ったバナナを赤ちゃんにそのまま渡してみたり、献立は同じだったとしても、使用する食材を旬のものに変えてみたり。そうしたちょっとした工夫を加えるだけでOKなんです。親御さんが食べる夕飯づくりと一緒に調理してしまえば時短にもなります。毎日の離乳食づくりをプレッシャーに感じるほど頑張る必要はありません。肩のチカラを抜いて楽しみながら取り組んでみてください。

おすすめレシピ
  • ◎まとめ煮アレンジ(5ヶ月頃(初期)から)

    にんじんを棒状に、玉ねぎをくし形切り、じゃがいもを4つ割り、キャベツをざく切りにし炊飯釜や鍋に入れ、かぶるくらいの水をいれやわらかく煮る。具を取り出して離乳食用に食べやすく切る。
    煮汁は野菜スープとして使用し、中期食からはカットしただし昆布や鶏肉を加えてもよい

  • ◎おかず蒸しパン(9か月以降およそ1食分)

    ホットケーキミックス25g、牛乳大さじ2を混ぜ、刻んだゆで野菜(冷凍ミックスベジタブルでも)やしらす、ツナなど好みの具を大さじ1ほどまぜる。底径10×7㎝角程の耐熱容器にラップを敷いて生地を流し、ふんわりラップをかけレンジで焼く1分加熱する。冷めたら食べやすく切る。 ※加える具材を変えたり、フライパンで焼いてホットケーキにするなどアレンジできます。手づかみ食べにおすすめ。

ドラッグストアなどでは市販の離乳食の種類も増えています。これらを活用してもよいものでしょうか。

もちろん、おおいに活用してください。私もいくつかの商品の監修に携わっていますが、最近の市販品は栄養バランスや大きさなどが考慮されていますし、味付けにおいても規格に則って製造されています。赤ちゃん用として販売されている商品については、安心して利用して問題ありません。離乳食づくりに疲れてやる気が起きない、子育てを楽しめない状況にあるなら、無理してすべて手作りしようとせずに市販品を活用するのがベターです。

また、赤ちゃん用ではなくても、おかゆや野菜ペースト、豆腐、ヨーグルト、ツナ、コーンなど、調理のいらない完成品は存分に活用できます。例えばそれらの商品に、きな粉や海苔、ゴマをちょい足しするだけで栄養価も上がり、より美味しく食べられます。

大事なのは、つくる時間よりも“食べる時間を重視する”こと。調理する方に時間を割きすぎて赤ちゃんと食卓を囲む時間が取れなくなるのは本末転倒です。赤ちゃんは食事の時間を通じて、ママ・パパとコミュニケーションを取っています。そのかけがえのない時間を大切にしてほしいと思います。

おすすめの組み合わせ例(以下3品いずれも中期食から食べられる内容です)
  • ①プレーンヨーグルト+きな粉

    (つぶしたバナナを添えても◯)

  • ②トマトペースト、豆腐、粉チーズ

    (トマトペースト小さじ1を湯小さじ2でのばし、
    角切りにしてゆで水気を切った豆腐にかけ、粉チーズをふる)

  • ③おかゆ+ひきわり納豆+青のり+かつお薄削り節

THEME 04

赤ちゃんと食

食事の量は
一人ひとり異なります。
“楽しく食べる”をきっかけに
「食の自立」を促そう。

食事の量で不安になった場合、どうしたらよいでしょう。

離乳食の悩みで最も多いのが、食べる量について。みなさん、世に出回っている情報と比べて、我が子の食事量が少ない(または多い)と心配になるようです。しかし、多くは心配に及びません。私のもとへ相談にくる赤ちゃんは、食事量についてまったく問題ないケースがほとんどです。食事量の基準値はあくまで目安でしかありません。赤ちゃんそれぞれに食べる量は異なりますし、食事のたびに食べる量が変化することも珍しくありません。
離乳食は食べる練習でもあるので、食べたかどうかの結果を気にしすぎないようにしましょう。ただ、発達の影響がある場合もありますので、気になるときは抱え込まずに相談しましょう。

基準通りにいかなくても気にしすぎず、世に出回る情報を「正解」と捉えずに、柔軟にお子さんと向き合ってもらえたらと思います。特に現代は、離乳食や子育てに関する情報がインターネットやSNSに溢れている時代です。だからこそ、比べて悩まれてしまうケースも多いので、臨機応変に子育てを楽しむぐらいの気持ちで我が子と向き合う方がよいでしょう。

最後に、このページを見ている、子育て中のママ・パパに応援メッセージがあればお願いします。

仕事と育児の両立をされている家庭が多いなかで、時間が足りないのはみなさん共通のお悩み。なかなか思い通りに事が進まないと、ご自身が疲れ果てて体調を崩し、気持ちも不安定になる。そのせいでついイライラし、そしてそんな自分が嫌になる…。このような日々の繰り返しに辟易しているママ・パパの話をお聞きします。

子育てはパパ・ママのコンディションがとても大事です。赤ちゃんは親御さんの姿から感情を敏感に受け取っています。離乳食づくりにおいても、「疲れたときは無理しない」という鉄則を思い出して、無理のない範囲で取り組んでみましょう。

また、悩んだときや助けが欲しいときは、周りの頼れる人に相談するのが大切です。私自身も食に関する相談を受け付けていますが、お住まいの自治体の子供家庭支援センターや、最近は小児科でも相談できるところもあります。ご自身にあった相談先を活用しましょう。食べることは人の一生に深く関わります。食の楽しみを覚えた子供たちは食べる行為自体を好きになり、自発的に「食」の世界を広げていきます。すくすくと成長していく過程で「食の自立」を促せるよう、そして食を通じてそれぞれに幸せな家庭を築いていけるよう、応援しています。

※本サイト(とうきょう子育てスイッチ)では、【目的別で探す】ページから、地域やカテゴリーごとのさまざまなサービスや機関、情報を検索することが可能です。ぜひご活用ください!
※各区市町村では離乳食講習会等を実施していますので、各区市町村のホームページをご覧ください。本サイトで離乳食講習会等の情報を検索する場合は、下記のとおりカテゴリーを選択してください。

※「子育て支援サービス」のカテゴリーで表示されない場合は、掲載がないか、別のカテゴリー(「相談」など)で掲載されている可能性があります。

中村 美穂(なかむら みほ)

aikaフードプランニング株式会社 代表取締役。管理栄養士・料理家。東京農業大学卒業後、デリ・レストランを運営する企業の商品開発職を経て、都内保育園の栄養士へ。乳幼児の食事づくりや食育活動、地域の子育て支援事業に携わる。2009年に独立し、料理教室「おいしい楽しい食時間」を開催。離乳食教室・食育講座の講師のほか、書籍・雑誌・WEB記事の執筆、生協カタログなどへのレシピ提供、監修を多数担当。2児の母。