普光院亜紀(ふこういん あき)
「保育園を考える親の会」顧問兼アドバイザー。ジャーナリスト。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社にて勤務。保育園に子どもを預けて働き続け、第1子の学童保育卒業を機に独立。保育や、仕事と子育ての両立にかかわる分野の執筆・講演活動を行うほか、国や自治体の保育関係の委員会、保育施設評価業務などにもたずさわる。著書に『後悔しない保育園・こども園の選び方(ひとなる書房)』、『保育園は誰のもの――子どもの権利から考える(岩波書店)』ほか多数。
INTERVIEW
01
出産を終え、子供のいる生活にも少しずつ慣れてきた。
そんなタイミングで迎える最初の大きなイベントが保育施設選びです。
初めて“保活”を経験するママ・パパはもちろん、第二子・第三子であっても、疑問や不安は多いもの…。
そこで今回は「保育園を考える親の会」のアドバイザー(顧問)として、
長年にわたって保護者の体験を聞き、相談に応えてきた普光院(ふこういん)亜紀さんに、
保育施設選びで注意すべきポイントや詳しい仕組みについて伺いました。
THEME 01
ここ最近の保活状況とは
2017年に8,586人だった東京都の待機児童数は、2023年7月の発表では286人と、9割減少しています。エリアごとの違いや1歳児クラスに待機児童が集中しているといった課題はいまだにありますが、少しずつ入園しやすくなり「どこでもいいから」という時代から、保育施設を比較検討するフェーズに入ってきたと感じています。一方で、人気のある保育園など必ずしも希望する保育園に入れるとは限らず、選択肢が増えているからこその悩みも多く耳にしますね。
「なにから始めればいいのか分からない」といった基本的なことから、「園による違いや選び方のポイント」「入園後のトラブル」などさまざまで“保育の質”に対する関心も高まっていると感じています。
インターネットで保育施設について検索すると「あまりの情報量に気が滅入ってしまった……」という声をよく聞きます。そのすべてに目を通すのは不可能ですし、民間のサイトでは特定の保育園の宣伝に偏っていたり、情報が古いケースも珍しくありません。まずは各自治体の公式サイトにアクセスし、地域内の保育園やこども園の情報をチェックすることが大切です。
また、「保活はいつから始めればよいのか」といった質問もよく受けますね。答えは、“いま”!認可保育園の入園申し込みは年間を通じて受け付けているので、区市町村が発行する「入園案内」はいつでも入手可能です。毎年いちばん入りやすい4月入園の入園案内は、前年10月・11月頃に出るのですが、思い立った時に入手しておき、新しい入園案内が配布されたら、改めて新しいものを入手するようにしてください。秋は区市町村の窓口や園見学の申込みなども混み合いますし、早めに園情報を把握したほうがゆっくり検討できます。また、空き状況によっては年度途中でも入園するという選択肢もありますので、保活を始めるのに「早すぎる」ことはありませんよ。余裕を持ったスタートが、希望の園に出会える近道かもしれません。
THEME 02
保育施設の種類や制度を知る
保育施設の種類は、大きく「①認可の保育施設」と「②認可外の保育施設」に分けられます。「①認可の保育施設」は、国の基準に基づき自治体に認可された施設のことで、認可保育所や、認定こども園、地域型保育事業(小規模保育事業、家庭的保育事業など)が該当します。認可以外はすべて「②認可外の保育施設」に分類され、都独自の認証基準を満たして設置された認証保育所、企業主導型保育、院内保育室やベビーホテルなどが該当します。幼児教育を目的とするインターナショナルスクールなども「②認可外の保育施設」に分類されます。「①認可の保育施設」は区市町村に入園申込をし保育料は区市町村が定める、「②認可外の保育施設」は各施設に入園申込をし保育料は各施設が定める、といった違いがあります。また、同じ種類の保育施設でも、園によって設備や保育の質はさまざまです。後ほど具体的なチェックポイントについても言及しますが、正しい情報を収集し、実際の園の様子を自分の目で確認することが重要だと思いますね。
認可の保育施設では、申し込み人数が受け入れ人数を上回った場合、区市町村が選考を行って入園する子供を決めています。その判断基準となるのが「利用調整指数」、いわゆる“点数”です。点数は、保護者の勤務時間などの就労状況や健康状態を反映した「基準指数」と、兄弟姉妹の状況や、同居中の保育可能な親族の有無などの家庭環境などを反映した「調整指数」で構成されており、同点の場合は、世帯年収などの「同一指数の場合の優先順位」にもとづき総合的に判断されます。
点数の付け方は、各自治体によって異なるので、住んでいる地域のホームページや窓口で確認をしましょう。一定期間以上認可外保育施設を利用している場合は加点になるケースもあったり、同居している祖父母が働いていることを申請せず、減点されてしまったということもあったりするので、ご家庭の状況や保育の実績、自治体ごとの基準をしっかりと把握することが大切です。
※実際の運用に当たっては、更に細分化、詳細な設定を行うなど、従前の運用状況等を踏まえつつ、区市町村ごとに運用
「子ども・子育て支援新制度について(令和4年7月)」 (こども家庭庁) (https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/59cb59b3-ce0e-4a4f-9369-2c25f96ad376/0a86ca26/20230929_policies_kokoseido_outline_01.pdf)を加工して作成
THEME 03
施設を選ぶときのチェックポイント
まずは、区市町村の窓口やホームページで利用案内を入手して、掲載されている保育施設の一覧から、近隣の保育施設をチェックしましょう。次に、そこに書かれている受入月齢(預けられる年齢・月齢はいつからか)、通園距離(自宅から通える距離か)、開所時間(送り迎えの時間に間に合うか)などの観点から、園をリストアップし、各園に電話等で見学の申し込みを行うのが一般的な流れです。
実際に園見学をする際には、いくつかの注視すべきポイントがあります。短い時間で細かいことまですべて確認するのは難しいので、自分なりの重視ポイントを書き出しておくとよいでしょう。また、必須項目を決めておいてどこでも聞くようにすることで比較検討ができます。 ただし、見学を重ねるうちに、大切に感じることが変化することもあるので、そこは柔軟に。父母でどんな園に入園させたいか話し合っておくことも大切です。
(保育園を考える親の会HP「保育園選びのチェックポイント」より抜粋)
「持ち物ゼロ」「英語プログラムに力を入れている」など、園ごとにさまざまな特徴を謳っている園もありますが、見学で実際に様子が見られる場合には、保育者がどんなふうに子どもに話しかけているか、安心して過ごせているかどうかにいちばん注目してほしいと思います。直感というか、施設長や保育者と対面してみての印象も大切にしてください。
THEME 04
もしも保活でお悩みなら
基本的なしくみ、利用調整などについては、区市町村の保育課に相談するのが確実です。入園案内を入手したら目を通して、不明な箇所に付箋をつけて質問するのもよいでしょう。不明点の確認のほか、最新の園の空き状況や、年齢や施設ごとの過去の調整指数のボーダーラインなども聞けば教えてくれる窓口が多いはずです。認可保育園の申込開始前後は窓口も混み合っているので、保育課の手が比較的空いている時期(5月〜夏ごろ)に行ったほうが、じっくりと相談にのってもらえると思います。
また、地域の子育てひろばや子供家庭支援センターなどでは、定期的に育児休業中の方々が集い、情報交換を行っています。そのなかで、お互いの園の口コミ情報を得たり、先輩ママ・パパからアドバイスをもらうのもよいと思います。よりリアルで実践的な話が聞けるかもしれません。なにより“同志”の存在を感じられることは、大きな心の安心につながるはずです。
※本サイト(とうきょう子育てスイッチ)では、【目的別で探す】ページから、地域やカテゴリーごとのさまざまなサービスや機関、情報を検索することが可能です。ぜひご活用ください!
※保育施設の情報を検索する場合は、下記のとおりカテゴリーを選択してください。
日々の仕事や子育てと両立しながらの保育施設選びは、本当に大変かと思います。いろいろな選択肢・制約がある中で頭を悩ますこともあると思いますが、迷ったときは「子供が幸せを感じられるか」「生き生きと自立した成長を育むことができるか」という原点に立ち返ってみてください。
そして、パートナーと一緒に計画を立てることや、家事や育児の役割分担をすること、情報の共有をしっかりと行うことも大切ですね。一人で抱え込むのではなく、子供の保育・成長にかかわる大切な時間を分かち合ってほしいと思います。みなさんの保育施設選びが、子供にとって、ご家族にとって、幸福なものになることを願っています。
普光院亜紀(ふこういん あき)
「保育園を考える親の会」顧問兼アドバイザー。ジャーナリスト。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社にて勤務。保育園に子どもを預けて働き続け、第1子の学童保育卒業を機に独立。保育や、仕事と子育ての両立にかかわる分野の執筆・講演活動を行うほか、国や自治体の保育関係の委員会、保育施設評価業務などにもたずさわる。著書に『後悔しない保育園・こども園の選び方(ひとなる書房)』、『保育園は誰のもの――子どもの権利から考える(岩波書店)』ほか多数。