「中秋の名月」って?
今年の「中秋の名月」は9月21日です。昔から、一年のうちでもっとも美しい月として有名な中秋の名月。旧暦※の8月15日の夜に見える月のことを指し、「十五夜」とも呼ばれます。
ちなみに、毎年、中秋の名月が満月になるとは限らないのですが、今年の中秋の名月は満月です。
中秋の名月をめでる習慣は、平安時代に中国から伝わり、江戸時代になって庶民にも広まったと言われています。
同時に、中秋の名月の頃は稲が育ち、間もなく収穫が始まる時期でもあるため、無事に収穫できる喜びを分かち合い、感謝する日でもありました。
※ 旧暦:月の満ち欠けと太陽の動きを加味して作られた暦(こよみ)。明治6年以前まで使用されていました。
「お月見」の作法
中秋の名月といえばお月見ですね。
地域によって違いはありますが、お供え物をして月を眺めるのが一般的です。
お供えには一つひとつに意味があり、ススキは魔除け、月見団子は団子を月に見立てることで、豊作への感謝の気持ちを表わします。
また、収穫されたばかりの農作物を供えることもあります。中でも里芋を供えるのが一般的です。
お月様の中には・・・餅をつくウサギ?
子供の頃、「お月様にはウサギが住んでいて、餅をついているんだよ」と聞いたことはありませんか?実際に、月の表面にはまるでウサギが餅つきをしているように見える模様がありますね。みなさんはその由来をご存じでしょうか?
「餅をつくウサギ」の由来って?
その発祥は、「ジャータカ神話」というインドの古い仏教説話の一節だと言われています。それが日本に伝わり、平安時代に『今昔物語集』に書かれたことが始まりです。
では、その内容を簡単にご紹介しましょう。
月になったウサギのお話
その昔、インドでウサギ、キツネ、サルの3匹が、悟りを開くための修行をしていました。
ある日、3匹のもとにひとりの老人が現れ、「年老いた私を養ってくれないか。」と言います。
それを聞いた3匹は老人を受け入れ、空腹の老人のために食べ物を探しに行きました。
サルとキツネはさまざまな食べ物を採ってきては、老人に与えましたが、ウサギはいつになっても何も採ることができません。
困ったウサギは、「私の肉を食べてください!」と言って火の中に飛びこみました。
しかし、この老人というのが、実は老人に扮した神様だったのです。
神様はウサギの行動に心打たれ、その姿を多くの人に見せようと、ウサギを月の中に蘇らせました。
月の中に見える雲のようなものは、ウサギが火に焼けた時の煙なのです。
(「今昔物語集(五) 全訳注/講談社学術文庫/国東文麿」より)
海外では「ウサギ」じゃない?
日本では、月の中の模様を「餅をつくウサギ」に見立てますが、実は海外では違う見方をしています。
例えば、北アメリカ南部では「ワニ」、南アメリカの一部では「ロバ」、北ヨーロッパでは「本を読むおばあさん」、南ヨーロッパの一部では「カニ」、ドイツでは「薪を担ぐ人」など、国により見方は様々です。
今年の中秋の名月は、お子さんと一緒に、ウサギのお話などをしながら、お月見を楽しんでみてはいかがでしょうか?
<参考>
国立天文台
https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2021/09-topics03.html https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C3E6BDA9A4CECCBEB7EEA4C8A4CF.html
今昔物語集(五) 全訳注/講談社学術文庫/国東文麿
月を知る/岩崎書店/三品隆司