11月 親子で行事を楽しもう ~新嘗祭~
11月23日は「勤労感謝の日」の祝日ですね。働く人への感謝を表す日として知られていますが、本来は「新嘗祭」の行事の日です。大切な宮中行事の1つであり、全国の神社でも行われている新嘗祭。日本人にとってとても大切な行事なので、ぜひ知っていただきたいと思います。
新嘗祭ってどんな行事?
その年に初めて収穫された穀物を神様にお供えし、その恵みに感謝すると共に、来年の豊穣(ほうじょう:五穀がゆたかにみのること)を願う神社の年間行事です。
その歴史は古く、日本書紀にも「新嘗」という言葉が出てくるそうです。
稲作の歴史と共にあった行事であることが伺えますね。
宮中では、特別な神殿にて神善がお供えされます。
その際に、その年の新穀で作られた食事を天皇自らがお供えし、また自ら共にお食事されます。神様と共に食事ができるのは天皇だけとされており、新穀で神様をもてなすと同時に、ともに新穀を食べることにより、新たな力を得て次の年の豊穣を約束すると言われています。
「新嘗祭までは新米を食べてはいけない」という話を聞いたことがあるかもしれません。
それは「天皇陛下が新米を召し上がった後に自分たちも頂く」という考えからであることがわかりますね。
日本人と食について
「生きることは食べること」。
日本人は古来から「食」を大切にし、神聖なものと考えてきました。
今回ご紹介した「新嘗祭」をはじめ、祭事の原点には自然の恵みや頂く命への感謝の気持ちが込められています。
こうした想いが集約されているのが「いただきます」と「ごちそうさま」という言葉ですよね。
「いただきます」は「この命を私の命にさせていただきます」というそれぞれの食材への感謝の気持ち。
お肉やお魚だけでなく、野菜や果物にも命があると考え、「この命を私の命にさせていただきます」と食材への感謝の気持ちを表します。
また、お米や野菜を作ってくれた方、お魚をとってくれた方、料理を作ってくれた方、配膳をしてくれた方など、その食事に携わってくれた方への感謝の心を表します。
「ごちそうさま」にも食事を準備してくれた方への感謝の気持ちが込められています。
「ごちそうさま」を漢字で書くと「御馳走様」です。
「馳走」は走り回るという意味で、食事を出してもてなすために奔走する様子を表しています。
冷蔵庫もスーパーマーケットもなかった昔の時代には食材を揃えるだけでも大変だったと考えると、まさに「馳走」して準備をしていたのでしょうね。
やがて、丁寧語の「御」をつけた「御馳走」という言葉がもてなす/ぜいたくな料理という意味を持つようになり、「様」をつけた「御馳走様」という言葉が大変な思いをして食事を準備してくれた方への感謝の気持ちを込めた食後のあいさつとなっていきました。
たった6文字の中に、自然の恵みや頂く命への感謝、携わってくださった方への感謝が込められているんです。そう考えると、日々の1回1回の食事がとても特別なものに感じられますね。
最後に
我が家では、子ども達が小さい頃にこの話をしてみました。
すると、食べ物への感謝の気持ちが生まれると同時に、「もともと生きていたお肉やお魚を食べてしまうのはかわいそう」という気持ちにもなったようでした。
生きていくために他の命を頂かないといけないこと、だからこそ頂くからには感謝をして美味しく全部いただこう!と伝えるいいきっかけになったことを覚えています。
また、その日からより心をこめて「いただきます」「ごちそうさま」のあいさつをしているように感じました。
お子さんが小さいうちの子育て中は、毎日が賑やかにバタバタと過ぎていってしまうことが多いかと思いますが、「いただきます」「ごちそうさま」のタイミングで、この話をお子さんにしていただいたり、たくさんの恵みに支えられていることを思い出して活力を取り戻したり。
この記事がそんなきっかけにつながれば嬉しいなと思います。
参考
三浦康子 著/和の行事を楽しむ絵本/永岡書店
神社専門メディア 奥宮-OKUMIYA-
【著者】高嶋マキ
小学2年生と幼稚園年中の2児の母。
子ども達と季節を味わうことを楽しんでいます。